Ciao!
今回のベルニーニ・ラリーは、ボルゲーゼ美術館。
これまでの回はこちら
聖テレジアの法悦
バルベリーニ広場
サンタンドレ・デッリ・フラッテ教会
S・M・ソープラ・ミネルヴァ教会
ナヴォーナ広場
スペイン広場とポポロ広場
さて、フィレンツェのウフィツィ美術館がルネサンスの殿堂なら、ここボルゲーゼ美術館はバロックの殿堂!カラヴァッジョさんの作品を集めたカラ部屋(読み:カラヴェヤ)もあるよし、もちろんベルニーニさんの作品もたくさん!
でも、この美術館の前売りチケットの購入だけはめんどくさがって先延ばしにしちゃだめだよ。
何を隠そう、中の人も極度のめんどくさがりで訪問予定日の4日前になって、やっとチケットを買おうと重い腰をあげたら、既にオフィシャルサイトでは売り切れ!
ボルゲーゼは完全予約制でチケットがないと入れないから、泣く泣く定価の2倍近いお金を払って旅行代理店で手配してもらったよ。
キミもこんなことがないように、チケットの予約購入は計画的にね!
チェックポイント8:ボルゲーゼ美術館
1.歴史この建物は、もともとボルゲーゼ家の夏の邸宅として建てられ、1903年から一般公開されているよ。ボルゲーゼ家は教皇パウルス5世を輩出した名門一家だったんだ。
Il Padovano, Portrait of Pauls V 本当はカラヴァッジョさんの描いた肖像画があるはず なんだけど、見つからずパドヴァノさんのコピー(たぶん) |
邸宅を立てた、シピオーネ・ボルゲーゼさんは若いころのベルニーニさんのパトロンでもあり、カラヴァッジョ・コレクターでもあったから、二人の作品が充実してるよ。
19世紀には、一部の作品がフランスに持ち出されることもあったんだけど、それでも今なお、バロック美術の殿堂として、素晴らしい作品を所蔵しているよ。
僕がダヴィンチさんに影響を受けて描いたユニコーンを持つ貴婦人象もあるはずなんだけど、見つからず。
右側のがあるはず |
代わりに、僕の弟子が描いたLa Fornarinaを見つけたよ。
Raffaellino del Colle, La Fornarina 腕輪にあった僕の署名は消されてた |
2.コレクション
コレクションは1階が彫刻とカラヴァッジョさんの部屋、2階が絵画館になってるよ。今回はスペースの都合上、ベルニーニさんの作品だけにするね。怒涛のベルニーニコレクションを刮目せよ!
Apollo and Daphne 1625 |
これは、恋の神エロスのいたずらで金の矢を射られたアポロンがダフネに恋をしちゃうんだけど、ダフネの方は恋愛に興味がなくなる鉛の矢を射られてたから、さあ大変!しつこく求愛してくるアポロンに追い詰められたダフネは、川の神様である父親に頼んでローリエの木に変身してしまう・・・というお話の変身場面。
こんな感じの絵↓ではよく描かれてたんだけど、よくこれを3Dでリアルに再現してくれました!って感じでしょ?
Antonio del Pollaiolo, Apollo and Daphne National Gallery London |
手がローリエの葉に変っていくところは本当にリアル |
体は木の幹になるんだけど、樹皮の質感がすごい! |
ちなみに、アポロンがいつもかぶっている月桂冠は、このダフネの木から作ったもの。金の矢で洗脳されてるとは言え、アポロンのストーカー力が半端ない!
次の作品も、質感職人としてのベルニーニさんの腕前が光る一品!ペルセポネの略奪。
Rape of Proserpina 1622 |
こちらは、ある日ペルセポネが野で花を摘んでいると(トイレじゃなくて、ホントに花を摘んでたと思うよ)、いきなり現れてた冥界王ハデスに連れ去られ、嫁にされたというお話。
空想上の生き物ケルベロスも現実に存在しそうなほどリアル。
首周りのモフモフ感の再現が半端ない! |
腰回りに付きがちな脂肪の環も見事に表現。 おしりえくぼもあるよ。 |
ペルセポネの太ももにもっちり沈み込むハデスの指の表現は もはや変態的な再現力! モデルを使って何度も試したのだろうか? |
この作品↓は、ギリシャ軍の木馬の策略で攻め落とされたトロイアから父アンキセスを背負い、息子のアスカニウス(写真では見えないけど、2人の後ろにいるよ)を連れて逃げるアエネアスの像。アエネアスはその後イタリアに渡り、ローマの近くに新しい街を開いたと言う伝承があるよ。
Aeneas, Anchises, and Ascanius 1619 |
お父さんのやせた腕に浮かぶ血管や膝小僧のシワの表現がすごい! ちなみに彼が大事に抱えているのは先祖の遺灰。 そのチョイスもリアルw |
この像はベルニーニさん19歳の時の作品。あまりにもすごすぎるから、お父さんに手伝ってもらったんじゃないか?という疑惑すら生まれたほど。
痛々しいほどやせ細って肉の落ちた老人のもも。 これが19歳の手で作られたとは。 |
お次は、言わずと知れたダビデ像。大きく振りかぶって、ゴリアテに狙いを定めているところだよ。
David 1624 高さ170cmと三毛さんのダヴィデより小さい |
力を込めて張りつめられた投石機の縄の質感もリアル!
真理は細部に宿る。 |
最後の紹介するのが「真実」。「真実」を擬人化した女性が「時」にベールをはぎ取られているシーンだよ。
Truth unveiled by time 1646-1652 |
英語名は「時に暴かれた真実」となっていて、英語のことわざTime unveiling truth(時が真実を暴く)にかけてあるんだ。そういえば、宇多田ヒカルさんの歌にTime will tellってあったよね♪
この作品を作り始めた1646年のベルニーニさんは、サン・ピエトロ大聖堂の鐘楼のひびの一件で評判がガタ落ちだった上に、後ろ盾だったウルバヌス8世も亡くなって、ヴァチカンを離れてたんだ。その時期に「自分のやってきたことは正しい。時間がたてばわかる!」という信念で彫り進めたのがこの作品。
だから、この作品は誰かからの注文ではなく、自主製作。でも、結局は思ったより早く復帰出来たから、作品は未完成のまま残されたんだ。
「真実」のどや顔から、ベルニーニさんの心中をお察しするよ。
どうだ!私のすごさが分かったか! |
ベルニーニツアーも、いよいよ佳境!次回が最終回だよ。
それじゃあまたね!Ciao!
ボルゲーゼ美術館アクセス
バス Pinciana/museo Borghese下車 3分
【参考文献】
この本の英語版