2017/08/08

宗教画の歴史

Ciao!

みんな、宗教画って好き?僕は大好きなんだけど、人によっては、宗教画は古臭くて嫌いって人もいるんじゃないかな?

確かに、宗教画は西洋絵画の中でも歴史の長い分野だから、その中で生まれたルールや元ネタを知らないとわかりにくいってところはあるけど、逆に言えば、そこさえ押さえておけば決して近づきがたい物じゃないよ。

歴史が長いからこそ、その進化の過程を見れるっていう楽しみもあるしね。

ということで、今回は宗教画についてその歴史とバロックまでの時代ごとのトレンドを見ていこう!

目次
1.絵画界の王様、宗教画
2.宗教画の始まりと発展
3.中世の宗教画
4.ルネサンスからバロックの宗教画

1.絵画界の王様、宗教画

西洋画で宗教画といえば、もちろんキリスト教に関連する絵画だよ。

西洋絵画には古代ギリシャの神話をモチーフにしたものも有るけど、それは「神話画」と呼ばれるのが一般的だから、宗教画といえばあくまでキリスト教画。

この宗教画と神話画はルネサンス以降、19世紀まで続く西洋画の二大ジャンルで、合わせて歴史画とも呼ばれているよ。実際の歴史的場面を取り扱ったものも含まれてるけど、量では宗教画と神話画が圧倒的に多いんだ。

歴史画は、西洋絵画の中でも高位のジャンルとされているから、それを描く画家たちの力の入れようも凄かったんだよ。いっぱしの歴史画が描けてこそ一流の画家って時代が長かったからね。



2.宗教画の始まりと発展

キリスト教美術の始まりは、2世紀後半から3世紀の初めごろに遡るよ。キリスト教はユダヤ教の流れを引き継いで、偶像崇拝を禁じてたけど、間接的・暗示的な形で信仰の対象が絵や像に現れ始めたんだ。これが初期キリスト教美術と呼ばれる時代。

よき羊飼い(300年頃)、バチカン美術館
男性はキリストを、羊は信者を暗示してるよ

330年にローマ帝国の帝都がコンスタンティノープルに移されたことで、文化の中心も東へと移ったんだ。その結果、ヘレニズム文化やペルシアなど東方の国々の影響が入り込んだ美術様式をビザンティン美術というよ。

ビザンティン美術はその後1000年以上に渡って、教会との深い関連の中で連綿と受け継がれていくことになる。


キリストのモザイク(部分。12世紀)、アヤソフィア

さて、476年に西ローマ帝国が滅ぼされると、その地域にゲルマン人の文化が入り込んできた。

ただし、ゲルマン人の作ったフランク王国や神聖ローマ帝国でも絵のトレンドは基本的にはビザンティン様式。これらの国は、ローマ文化の後継者という自負があったから、ローマ文化を尊重したんだ。


ケルズの書(800年頃)、トリニティカレッジ図書館
フランク王国、メロヴィング朝時代の写本装飾
北方文化であるケルトの影響がみられる



3.中世の宗教画

中世の美術というと、ロマネスク様式とゴシック様式。名前くらいは聞いたことがあるって人が多いんじゃないかな?どちらももとは建築様式を指す言葉だよ。

ロマネスク美術は絵画や彫像ではビザンティン美術の影響を色濃く残すものの、写本の装飾では、新たな境地に至ったんだ


The Morgan Leaf(1160-1175), Winchester

現存する最も古いステンドグラスもこの時代のものだよ。


ダヴィデ王(11世紀か?)、Augsburg Cathedral

ロマネスクの頃の絵は、人里離れた場所にある修道院で、ひとつの絵を参考に同じものを何度も描くことも多かったんだって。きっと写経に近い感じだったんだろうね。

さて、ゴシック美術の時代になると、絵画はより写実的な表現を求め始める。人物の表情はより人間らしく、場面表現はより物語性を帯びてきた。とはいえ、まだまだビザンティンの残り香が感じられるよね。


デゥッチョ、玉座の聖母子と6天使(1285頃)、ウフィツィ美術館
奥行き感の欠如、聖母の大きさを極端に強調するなど
古き良き時代の表現方法は健在。


ジョット、オグニサンティの聖母(1310)、ウフィツィ美術館
立体感も出たし、表情も姿勢も柔らかくはなったけど、
まだルネサンス以降の絵画とは違う印象が漂う

建築も飛躍的な進化を見せ、広い室内空間には大きな窓を作れるようになり、ステンドグラスも豪華になったよ。


ケルン大聖堂のステンドグラス(1300年頃)

このころから美術の享受者のすそ野が、王侯貴族、教会関係者だけでなく、都市の富裕層や知識人にまで広がるんだ。

 

4.ルネサンス以降の宗教画

ルネサンス以降の宗教画は、教義の伝播だけでなく、装飾性やドラマ性も大切にされるようになっていったんだよ。主題にになじみがなくても、パッと見てすごいな~と思う作品が増えてくるのもここから。

このころから、絵は街の画家によって描かれ始める。ルネサンスの初期までは絵のうまいお坊さんが描いてる場合も多いけどね。

時代ごとに見ていくと、ルネサンス初期


フラ・アンジェリコ(1430、受胎告知、プラド美術館
フラは英語でいうところの「ブラザー」。修道士の肩書の一つ。

ルネサンス盛期
美しき庭師(1507)By僕、ルーブル美術館
写実性は写真級でしょ?
さらに柔らかさと温かみも感じるでしょ?
ね?ね?

マニエリスム


パルミジャニーノ、首の長い聖母(1540頃)、ウフィツィ美術館
様式化は感じるものの、ビザンティンの様式美とは全く違うね

バロック


カラヴァッジョ、ゴリアテの首を持つダヴィデ(1606頃)
ボルゲーゼ美術館
バロックは特にドラマ性重視の時代

などなど。

ルネサンスを境に人々の価値観が大きく変わり、宗教画に求められるものも変わった。

現実離れした荘厳さよりも、写実的な技巧でみんなをうっとりさせたり、エンターテーメント性あふれるドラマチックな場面展開のある絵に人気が出たんだ。


さてと、こんなところでキリスト教美術の始まりからバロックまでの変化を一通り感じてもらえたかな?それでは今回はここまで。

Ciao!