Ciao!
前回は宗教画の歴史をさくっと紹介したけど、今回はイエス・キリストその人の生涯を絵画で追っていくよ。
宗教画の歴史
イエス・キリストは宗教画では一番多く描かれているテーマだから、同じ場面がいろんな画家によって描かれてるんだ。今回は、特に人気のシーンを巨匠たちの作品で紹介するよ。
1.降誕~エジプトへの避難
キリスト降誕の年は、ヘテロ王統治下で大規模な人口調査のあった年とされているよ。現在では、紀元前4年頃に生まれたって説が有力みたい。人口調査のためにみんなが一斉に出身地に帰ろうしたから、街も宿屋も大混乱。マリア様とヨセフさんは宿も取れず、ベツレヘムの厩で一夜を明かしたんだ。この時に生まれたのがイエス様。
ギルランダイオ、キリストの降誕、聖トリニータ教会 |
中村光先生、聖☆おにいさん、10巻より マリア様の気持ち |
厩の住人として出てくる動物は、だいたい牛とロバ。天使か3人の羊飼いがお祝いに駆けつけていることが多いよ。上の絵では奥に東方三博士が見えてるね。
キリストの誕生直後、占星術でそれを知った賢人たちが厩にやってきたシーンが東方三博士の礼拝。
ボッティチェリ、東方三博士の礼拝、ウフィツィ美術館 |
中村光先生、聖☆おにいさん、10巻より |
グローバル感を出すために、賢人をヨーロッパ人、アジア人、黒人に描き分けることもあるよ。
三博士たちが帰った後、ヨセフは妻子とともにエジプトを目指す。なんでも、危機が迫っていると天使から夢のお告げがあったんだって。
カラッチ、エジプトへの避難、ドーリア・パンフィーリ美術館 |
この場面では、聖家族とロバが大自然の中を旅する様子が描かれるよ。画家にとって旅の様子は、風景画を描く格好の機会だったんだ。
さて、彼らが去った後のヘテロ王の国では、嬰児の大虐殺が起きていた。ユダヤの王が生まれるという予言を聞いたヘテロ王が、赤ちゃんを片っ端から殺して回ったんだ。
ルーベンス、幼児虐殺、アルテ・ピナコテーク |
この主題では、登場人物の描き分けが画家の腕の見せ所。生きている赤ちゃんと殺されてしまった赤ちゃん、逃げ惑う華奢な母親と、それを追う屈強な兵士という対比が画家のチャレンジ精神を刺激したんだ。
2.幼少期~洗礼
マリア様が幼少期のイエス様と戯れたり、あやしたりっていう聖母子の肖像はルネサンス期の人気のテーマ。僕もたくさん注文を受けたよ。大公の聖母by僕、パラティーナ美術館 |
後にイエス様を洗礼することになる洗礼者ヨハネは、彼の親せきっていう設定だから、聖母子の絵にヨハネさんが登場することも多いよ。
ひわの聖母by僕、ウフィツィ美術館 |
あ、この辺りの事はエジプトの避難とは別の次元でとらえられてる話だから、エジプトに逃げて大変な時に随分のんきに子供と遊んでるなぁなんて思わないでね。
さて、キリスト教が成立したのは、あくまでイエス様が死んだ後のこと。生前の彼はユダヤ教徒だったんだ。ということで彼はまずは、ユダヤ教のしきたりに従って洗礼。この時の洗礼者がヨハネさん。
ヴェロッキオ、キリストの洗礼、ウフィツィ美術館 |
上の絵の左側で横顔を見せている天使は、当時ヴェロッキオさんの工房で修行中だったダ・ヴィンチさんが担当したんだよ。そのほか、キリストの足元の水面や背景の一部も描いたんだって。
3.弟子の獲得、布教、奇跡
洗礼を受けたキリストは、宗教家として活動を始める。その過程で、弟子たちとも出会うんだ。カラヴァッジョ、聖ペテロと聖アンデレの召命、ロイヤルコレクション |
ペテロさんとアンデレさんは漁師をしていたところをスカウトされたよ。
こちらは、布教先でお世話になった民家での一コマ。
フェルメール、マリアとマルタの家のキリスト スコティッシュ・ナショナル・ギャラリー |
キリストを迎えるために忙しく食事の支度をする姉マルタに対して、妹マリアのようにゆっくり説教を聞きなさいと説くキリスト。ご飯よりも、自分の話を聞いてほしかったんだね。
カナの婚宴という主題も、キリストの奇跡に関連した人気のシーン。結婚式に呼ばれたキリストは、途中でワインがないことに気づく。すくっと立ち上がると、ズボンを下げてジョンジョロ、ジョンジョロとワイン樽に小便を・・・
じゃなかった。奇跡で追加のワインを作り出した、ってお話。
パオロ・ヴェロネーゼ、カナの婚宴、ルーブル美術館 |
中村光先生、聖☆おにいさん、10巻より この能力のおかげで、聖家族は酒代いらず |
4.最後の晩餐と祈り
自分の最期を悟ったキリストが、そのことを弟子たちに打ち明けるのがあの「最後の晩餐」のシーン。ダ・ヴィンチ、最後の晩餐、S・M・デッレ・グラツィエ教会 |
「この中に裏切り者がいる(`・ω・´)キリッ」との告白に、食卓がざわめく。
食後に、祈りをささげるために外へ出たキリストに三人の弟子が付き従う。キリストは、近くで起きて待っててねと告げるんだけど、弟子は三人ともそろって爆睡しちゃうっていうシーン。
ベッリーニ、ゲッセマネの祈り、ナショナル・ギャラリー・ロンドン |
仕方がないので、一人っきりで神の使いと対話するキリストの背中が悲しい。
5.処刑
キリストの生涯の中で一番劇的に描かれるのはキリストの処刑シーン。キリストが地上に遣わされたのは、その命を以て人間の罪をあがなうというミッションがあったから。だから、このシーンはキリスト教徒にとってとても重要な意味を持つんだ。
処刑場のあるゴルゴタの丘まで、自分の十字架を背負って歩かされるキリスト。
ボス、十字架を担うキリスト、ヘント美術館 |
駆けつけた聖母が失神している姿も良く描かれるし、上の絵では、キリストに汗を拭くように布を渡した聖ベロニカが描かれているね(左下)。同じ日に処刑が執行された、2人の罪人も描かれているよ(右の上下)。
いよいよ、丘での処刑執行。磔にされたキリストは、最後にロンギヌスに槍で胸を一突きされたとされてるよ。
このシーンでは、聖母は磔を直視できずにいるか、失神した姿で描かれることが多い。そして、色々な時代の聖人たちが磔を見守ってるのが常なんだ。(このへんのからくりはまた今度)
親族や弟子たちによって遺体を引き取られたキリストは、墓に葬られるんだけど、ここで終わりじゃないのがキリストが神の子たるゆえん。当たり前のように復活するよ。
前で寝ているのは見張りのローマ兵。復活を目の当たりにして、びっくりしてるバージョンもあるよ。
人間の罪を自らの命であがなうという使命は果たしたから,
これにてMission accomplished!
セカンドライフは天上でということで、天に帰っていきます。
さて、これまでの話は(史実かどうかは別として)全て過去の話。そしてこれからのことは未来の話だよ。
地獄行の人は悪魔に、天国行きの人は天使に導かれて行く様子を、キリストや歴代の聖人たちが天から見てるっていうのがよくある構図だよ。
さて、こんな感じで、キリストの生涯はおしまい!楽しんでくれたかな?
それじゃあまたね。Ciao!
【参考文献】
一話完結だから、1巻から買わなくても面白いよ~
いよいよ、丘での処刑執行。磔にされたキリストは、最後にロンギヌスに槍で胸を一突きされたとされてるよ。
ルーベンス、磔のキリストと2人の盗人 |
このシーンでは、聖母は磔を直視できずにいるか、失神した姿で描かれることが多い。そして、色々な時代の聖人たちが磔を見守ってるのが常なんだ。(このへんのからくりはまた今度)
親族や弟子たちによって遺体を引き取られたキリストは、墓に葬られるんだけど、ここで終わりじゃないのがキリストが神の子たるゆえん。当たり前のように復活するよ。
ピエロ・デラ・フランチェスカ、復活、チヴィコ美術館 |
前で寝ているのは見張りのローマ兵。復活を目の当たりにして、びっくりしてるバージョンもあるよ。
人間の罪を自らの命であがなうという使命は果たしたから,
これにてMission accomplished!
セカンドライフは天上でということで、天に帰っていきます。
ペルジーノ、キリストの昇天、リヨン美術館 |
さて、これまでの話は(史実かどうかは別として)全て過去の話。そしてこれからのことは未来の話だよ。
6.最後の審判
今後起こるだろうとされているのは最後の審判。7つのラッパが鳴り響くと始まるキリスト主催の裁判だよ。今まで亡くなった人が一旦よみがえり、天国行きか地獄行かを決められるの。ミケランジェロ、最後の審判、システィーナ礼拝堂 |
地獄行の人は悪魔に、天国行きの人は天使に導かれて行く様子を、キリストや歴代の聖人たちが天から見てるっていうのがよくある構図だよ。
さて、こんな感じで、キリストの生涯はおしまい!楽しんでくれたかな?
それじゃあまたね。Ciao!
【参考文献】
一話完結だから、1巻から買わなくても面白いよ~